人質軟禁事件!? その3

部屋に閉じ込められてから、30分は経過しただろう。
散々に罵られ、脅かされ、いいように汚い言葉を吐き捨てられていた状況か
ら、遂に相手を交渉のテーブルに引きづり出した。

一時は絶体絶命で、人生を投げ出しそうになったのが嘘のようだ。

それどころかセルパは、わたしの放った店の潰し方を知っている的な発言に
対して、あらわに警戒心を見せだした。よほど店が潰れては困る何かがある
のだろう。とりあえず云ってみるもんだ。

私のことをやっかいな客と思ったのだろうか、早期決着に走ったセルパは、
執拗に財布を見せろと迫った。とりあえず有り金を全部巻き上げようという
魂胆なのだろう。それとも、よほど私達のことをお金持ちと勘違いしたのだ
ろうか?  私は手際よく大金入りの財布をチラリとだけ見せて、「一万六千
円しか入ってませんよ」と言い切った。

性格の悪いセルパは目も悪いのだろうか、全然気が付かなかったようだ。

このまま押し通せる・・、そう思った私は、ほくそ笑みそうになった。

誰もが勝負はついたかに見えた。
セルパは有り金は全部巻き上げようとするが、ついさっきまで要求していた
「カード出せ!」や「時計を見せろ!」という発言はしなくなった。若い衆
達の雰囲気も違ってきた。

この状況で、わたしが「一万六千円しか持っていない」と云っている以上、
これ以上話の発展のしようがない。あとは彼らの雑言をじっと耐え忍べば解
決に向かう、そう思うのは決して楽観的な考えではないはずだ。

横で動きを封じられていたSさんが、突然叫んだ!

「金なんて、払うことぁない!」。 アリャ・・・


セルパの和(なご)みかけた目に、鋭さが戻った(涙)。

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